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日別アーカイブ: 2025年4月21日

中嶋建設のよもやま話~排水設備~

皆さんこんにちは!

株式会社中嶋建設の更新担当の中西です。

 

さて今回は

~排水設備~

ということで、アンダーパスにおける排水設備の設計手法について、構成要素・計算基準・実務でのポイントを深く掘り下げて解説します。

 

「水との闘い」に勝つ、地下道路の生命線とは?

アンダーパス(undepass)とは、鉄道や幹線道路と交差する地点において、道路を立体交差化するための“下を通す構造物”です。
都市部の渋滞緩和、安全性向上などに大きく貢献する一方で、最大の課題となるのが“浸水リスク”です。

アンダーパスは周囲よりも標高が低いため、雨水や地下水が自然排水できない構造であるため、排水設備の設計が極めて重要になります。


✅ なぜアンダーパスに排水設備が必須なのか?

🔹 浸水の主な原因

  • 周辺地盤より低いため、重力による自然流下ができない

  • 降雨時に雨水が集中しやすく、冠水しやすい地形条件

  • 地下水の湧水、舗装面の透水などによる日常的な湿潤状態

  • 気候変動による想定外の豪雨の増加

📌 適切な排水設計を行わなければ、車両の冠水事故・通行止め・設備損傷など、深刻な事態を招きます。


✅ 排水設備の基本構成

アンダーパスの排水設備は、主に以下の要素で構成されます。

項目 役割
集水設備(側溝・集水桝・側溝ピット) 雨水・湧水を一時的に集める設備
排水ポンプ(立坑・ポンプピット) 集水された水を強制的に汲み上げて排出
排水管路(圧送・自然流下) 処理水を最終排水先(下水・河川)へ導く
非常用電源・制御盤 停電時のポンプ稼働を維持
貯留施設(雨水槽・調整池) 豪雨時の水量を一時的に緩和・分散

✅ 排水ポンプの設計手法と選定ポイント

① 必要排水量の算出(流出量計算)

  • 設計雨量(mm/h):通常は50〜100mm/h程度を想定

  • 流出係数(舗装材や地形によって変動)

  • 流域面積(集水範囲)

📌 流出計算には気象庁の過去の観測データや、将来の気候変動を想定した強雨モデルも使用されます。


② ポンプの能力設計

  • 算出した排水量Qに対して安全率(1.2〜1.5)をかける

  • 台数・出力・揚程(水を持ち上げる高さ)を決定

  • 可動部が少ない竪軸・水中ポンプが主流

複数台の交互運転・非常用ポンプの併設が基本!

運転方式 特徴
単独運転 小規模な施設向け
交互運転 負荷を分散、寿命を延ばす
並列運転 大量排水が必要な場合
自動起動制御 雨量や水位に応じてON/OFF制御

✅ 排水先・処理ルートの検討

  • 原則は既設下水道や雨水幹線への接続

  • 下水道に余裕がない場合 ⇒ 一時貯留槽+時間差排水が必要

  • 接続先の許容量・管理者の同意取得も設計段階で要確認

📌 排水先が河川の場合は「河川法」に基づく許可が必要になるケースもあります。


✅ 排水に関する補助設備の設計ポイント

🔹 貯留設備

  • 短時間の豪雨に対応できる雨水貯留槽・調整池

  • 貯留容量は設計降雨強度×流域面積×一定時間分で決定

🔹 非常用電源・制御盤

  • 災害時の停電対策として自家発電機 or バッテリーバックアップを設置

  • 制御盤は水没しない高さ(1.5m以上)に設置

🔹 雨水逆流防止・バックアップ配管

  • 逆止弁やフラップ弁の設置により、下水道からの逆流を防止

  • 計画外の高水位時に備えたオーバーフロー管の整備


✅ 維持管理を見越した設計

  • ポンプ点検・桝清掃・流量計測が容易に行える配置計画

  • 電気設備の点検スペース・作業導線の確保

  • 流量計・水位センサーによる自動通報システム(クラウド管理)導入も検討

📌 排水設備は「使うときだけでなく、使わない時期の保守」が重要です。


✅ 最近の動向:スマート排水システム・AI制御の導入

  • IoTを活用した水位・降雨量のリアルタイム監視

  • AIによる予測制御で事前にポンプ稼働を準備

  • 台風・豪雨などの広域データと連携し、地域全体で排水制御

🌐 こうしたシステムは「スマートインフラ」として国土交通省でも推進中です。


✅ 排水設計は“アンダーパスの生命線”

アンダーパスの排水設備は、構造そのものの安全性を左右する最重要インフラです。
排水が機能しなければ、道路の価値はゼロになりかねません。

そのためには

✅ 流域に応じた的確な流出量の把握
✅ 信頼性の高いポンプ・電源・管路設計
✅ 予想外の事態に備えた貯留・自動制御・維持管理の工夫
✅ 将来を見据えたAI・IoT活用の検討

アンダーパスの排水設備は、「普段は目立たないけれど、いざという時に命を守る」まさに地下の守護者なのです。

 

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