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月別アーカイブ: 2025年4月

中嶋建設のよもやま話~排水設備~

皆さんこんにちは!

株式会社中嶋建設の更新担当の中西です。

 

さて今回は

~排水設備~

ということで、アンダーパスにおける排水設備の設計手法について、構成要素・計算基準・実務でのポイントを深く掘り下げて解説します。

 

「水との闘い」に勝つ、地下道路の生命線とは?

アンダーパス(undepass)とは、鉄道や幹線道路と交差する地点において、道路を立体交差化するための“下を通す構造物”です。
都市部の渋滞緩和、安全性向上などに大きく貢献する一方で、最大の課題となるのが“浸水リスク”です。

アンダーパスは周囲よりも標高が低いため、雨水や地下水が自然排水できない構造であるため、排水設備の設計が極めて重要になります。


✅ なぜアンダーパスに排水設備が必須なのか?

🔹 浸水の主な原因

  • 周辺地盤より低いため、重力による自然流下ができない

  • 降雨時に雨水が集中しやすく、冠水しやすい地形条件

  • 地下水の湧水、舗装面の透水などによる日常的な湿潤状態

  • 気候変動による想定外の豪雨の増加

📌 適切な排水設計を行わなければ、車両の冠水事故・通行止め・設備損傷など、深刻な事態を招きます。


✅ 排水設備の基本構成

アンダーパスの排水設備は、主に以下の要素で構成されます。

項目 役割
集水設備(側溝・集水桝・側溝ピット) 雨水・湧水を一時的に集める設備
排水ポンプ(立坑・ポンプピット) 集水された水を強制的に汲み上げて排出
排水管路(圧送・自然流下) 処理水を最終排水先(下水・河川)へ導く
非常用電源・制御盤 停電時のポンプ稼働を維持
貯留施設(雨水槽・調整池) 豪雨時の水量を一時的に緩和・分散

✅ 排水ポンプの設計手法と選定ポイント

① 必要排水量の算出(流出量計算)

  • 設計雨量(mm/h):通常は50〜100mm/h程度を想定

  • 流出係数(舗装材や地形によって変動)

  • 流域面積(集水範囲)

📌 流出計算には気象庁の過去の観測データや、将来の気候変動を想定した強雨モデルも使用されます。


② ポンプの能力設計

  • 算出した排水量Qに対して安全率(1.2〜1.5)をかける

  • 台数・出力・揚程(水を持ち上げる高さ)を決定

  • 可動部が少ない竪軸・水中ポンプが主流

複数台の交互運転・非常用ポンプの併設が基本!

運転方式 特徴
単独運転 小規模な施設向け
交互運転 負荷を分散、寿命を延ばす
並列運転 大量排水が必要な場合
自動起動制御 雨量や水位に応じてON/OFF制御

✅ 排水先・処理ルートの検討

  • 原則は既設下水道や雨水幹線への接続

  • 下水道に余裕がない場合 ⇒ 一時貯留槽+時間差排水が必要

  • 接続先の許容量・管理者の同意取得も設計段階で要確認

📌 排水先が河川の場合は「河川法」に基づく許可が必要になるケースもあります。


✅ 排水に関する補助設備の設計ポイント

🔹 貯留設備

  • 短時間の豪雨に対応できる雨水貯留槽・調整池

  • 貯留容量は設計降雨強度×流域面積×一定時間分で決定

🔹 非常用電源・制御盤

  • 災害時の停電対策として自家発電機 or バッテリーバックアップを設置

  • 制御盤は水没しない高さ(1.5m以上)に設置

🔹 雨水逆流防止・バックアップ配管

  • 逆止弁やフラップ弁の設置により、下水道からの逆流を防止

  • 計画外の高水位時に備えたオーバーフロー管の整備


✅ 維持管理を見越した設計

  • ポンプ点検・桝清掃・流量計測が容易に行える配置計画

  • 電気設備の点検スペース・作業導線の確保

  • 流量計・水位センサーによる自動通報システム(クラウド管理)導入も検討

📌 排水設備は「使うときだけでなく、使わない時期の保守」が重要です。


✅ 最近の動向:スマート排水システム・AI制御の導入

  • IoTを活用した水位・降雨量のリアルタイム監視

  • AIによる予測制御で事前にポンプ稼働を準備

  • 台風・豪雨などの広域データと連携し、地域全体で排水制御

🌐 こうしたシステムは「スマートインフラ」として国土交通省でも推進中です。


✅ 排水設計は“アンダーパスの生命線”

アンダーパスの排水設備は、構造そのものの安全性を左右する最重要インフラです。
排水が機能しなければ、道路の価値はゼロになりかねません。

そのためには

✅ 流域に応じた的確な流出量の把握
✅ 信頼性の高いポンプ・電源・管路設計
✅ 予想外の事態に備えた貯留・自動制御・維持管理の工夫
✅ 将来を見据えたAI・IoT活用の検討

アンダーパスの排水設備は、「普段は目立たないけれど、いざという時に命を守る」まさに地下の守護者なのです。

 

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中嶋建設のよもやま話~設計~

皆さんこんにちは!

株式会社中嶋建設の更新担当の中西です。

 

さて今回は

~設計~

ということで、アンダーパス工事における設計の実務ポイントと、直面する課題・対策について深く掘り下げてご紹介します。

 

地形・交通・水との闘いを制する地下の道づくり

都市部や交通の交差点でよく見かける「アンダーパス(undepass)
これは道路や鉄道などの下を通す地下通路であり、交通の安全性・円滑性の確保渋滞緩和などの目的で多く活用されています。

しかし、アンダーパスは単なる「トンネル」ではなく、構造設計・排水設計・施工条件・周辺環境との調和など、非常に高度な設計力が求められる土木構造物です。


✅ アンダーパスの定義と用途

アンダーパスとは
鉄道や幹線道路と交差する箇所において、交通の立体交差化を図るために下を通す道路・歩道・自転車道等の構造物です。

主な用途

  • 鉄道との平面交差を回避(踏切廃止)し、安全性を向上

  • 幹線道路・バイパスとのスムーズな交通流を確保

  • 歩行者・自転車の安全な通行路を提供(歩道アンダーパス)


✅ 設計における主な検討項目

アンダーパスの設計には、複合的な視点が必要となります。


①【構造設計】 安全性と耐久性の確保

🔹 主な構造形式

  • 開削工法(矩形断面のボックスカルバートが主流)

  • 推進工法(交通を止めずに地下に埋設)

  • 仮設構台・仮締切・地中連続壁の併用

🔹 検討事項

  • 地下水位・地盤条件に応じた基礎形式の選定(杭基礎、直接基礎など)

  • 土圧・水圧・地震動に対する構造計算と配筋設計

  • 車両荷重・動的載荷に対するたわみ・沈下の評価

📌【ポイント】
構造物の沈下・亀裂・漏水を防ぐために、剛性の高い構造と連続性のある防水処理が重要です。


②【排水設計】アンダーパス最大のリスク「浸水」対策

アンダーパスの設計で最も重要なテーマのひとつが「排水処理」です。

🔹 なぜ浸水が起きやすい?

  • 周囲の地面より低いため、降雨や地下水が自然流下しない

  • 大雨時は排水能力を超えて冠水・通行止めのリスクが高い

🔹 必要な対策

  • 側溝・ピット・ポンプピットによる集水設計

  • 排水ポンプ設備(多段式・自動起動制御)の設置

  • 非常用電源・バックアップポンプの導入(停電対策)

  • 近年では豪雨対策のため雨水貯留槽を併設するケースも

📌【注意点】
設計時には「想定降雨量(時間あたりmm)」に加え、将来的な気候変動を踏まえた余裕設計が求められます。


③【施工性と周辺条件】 現場に応じた最適解を導く

  • 周囲の交通を止められない場合 ⇒ 夜間施工・段階施工・仮設構造の検討

  • 地下埋設物(上下水道、ガス、電力)の移設計画との整合

  • 施工ヤードの確保と工期短縮の工夫(プレキャスト利用など)

また、地下水が多い地域では掘削中の湧水処理や地盤沈下リスクにも留意が必要です。


④【安全性と維持管理性】 長く使われる構造物としての責任

  • 歩行者・自転車用アンダーパスの場合、照明・防犯対策(CCTV等)の設計

  • 換気、排水設備の点検しやすい配置とメンテナンス導線の確保

  • 脱出路・緊急連絡設備・表示板など災害時の安全設計も求められる

📌 設計段階から「完成後に誰が、どう維持管理するのか」を明確にすることで、ライフサイクルコストの最小化につながります。


⑤【法令・設計基準との整合】

法令・基準 内容
道路構造令 幅員・勾配・クリアランスなどの設計基準
河川法 水路近接や地下水排出に関わる規制
都市計画法・建築基準法 用途地域・建築制限との整合性確認
土地区画整理法 区画整理事業との調整が必要な場合も

✅ アンダーパス設計の課題と対応策

課題 対応策
地下水の多い地域での施工難 地盤改良・止水壁・揚水ポンプの併用
降雨による冠水事故の発生 ポンプ・非常電源・貯留槽の複合設計
維持管理費用の増加 プレキャスト化、点検性を高めた設計
利用者の心理的不安 明るい照明、防犯カメラの設置、見通しの良い設計

✅ アンダーパス設計は“交通と地域をつなぐインフラ戦略”

アンダーパスは、単なる「地下道」ではありません。
それは、都市交通の課題を解決し、人と物流の動線を快適にする社会インフラです。

その設計には、

✅ 土質・排水・構造・安全・景観への配慮
✅ 法令遵守と住民への説明責任
✅ 維持管理まで含めた「未来への責任」

が求められます。

アンダーパスの設計とは、人・モノ・情報が交差する“都市の呼吸”をつくる仕事なのです。

 

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今後ともよろしくお願いいたします。